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【先輩起業家インタビュー】

自然と、人の心と体を豊かにする空間を。
震災をきっかけに、南三陸で“将来に残る事業”を志して牧場を営む

さとうみファーム 金藤 克也さん

こんにちは!株式会社ESCCAインターン生のひまちゃんです。

 先輩起業家インタビュー第2回の今回は、南三陸でさとうみファームを経営する金藤克也さんにお話を聞きました!

 志津川から歌津まで、車を走らせること15分。海沿いにあるさとうみファームさんに到着。さとうみ、という名前の通り、きれいな海と里に囲まれた場所です。

 奥の方にはさとうみファームさんオリジナルブランドの “わかめ羊” も沢山いました。わかめ羊とは、南三陸産の高級わかめの未利用部分を食べて育った、ここでしか出会えない羊とのことです。通常の羊肉よりコクがあり、羊独特の癖がなくジューシーで柔らかいのが特徴です。他にも、わかめを食べられるBBQ広場や、目の前の海でシーカヤックツアー、羊とのふれあいや、遊び場もあります。さとうみファームさんの理念の通り心と体が豊かになれそうな空間です✨

わかめ羊と金藤さん。
左側の瓶は市販のフェルト、右側の瓶は羊からとって染めたフェルト

今回はそんなさとうみファームを経営し、羊飼いをされている金藤克也さんにお話を伺いました!

目次

先輩起業家プロフィール
金藤克也さん

1965年、広島県福山市生まれ。 広島で起業後、東京に拠点を移す。東日本大震災の1か月後に個人で支援活動の為に南三陸を訪れるようになる。子どもの遊び場や、海で遊べなくなった子どもたちの為にシーカヤック体験教室を実施したり、その活動を継続するために収益の柱として2014年に羊の牧場を開設。2017年に本格的に南三陸に移住。現在はさとうみファームで「南三陸わかめ羊」を育てながら地域に根差した活動を続けています。

南三陸町とのつながりと起業のきっかけは?

 2011年の東日本大震災の1か月後に、個人で支援活動の為に南三陸町を訪れたのが最初のつながりです。連日放送されていた被災地の現状、多くの海外の人たちからの支援の映像を見て、同じ日本人として何かしなければと思ったからです。

 初めは周りの友人に声をかけて物資を集めて配布したり、子どもの遊び場を作ったり、海で遊べなくなった子どもたちの為にシーカヤック体験教室を実施したり、その復興ステージに合わせていろいろな活動を行ってきました。支援活動は10〜20年は必要と思い、そういう活動を継続する為に何ができるかを2011年後半からは考え始めていました。

 そんな折に、オーストラリアで塩害地に育つソルトブッシュを食べて育ったブランド羊の事を聞き、津波で塩害になった耕作放棄地で羊を飼えることで、塩害地と耕作放棄地の問題解決になると思いました。また、ウェブサイトで調査をすると、海外では海藻を食べる羊がいる事を知り、漁師さんの手伝いをしている時に捨てられているわかめの茎が使えないかと閃きました。そこで宮城大学の先生に相談して、わかめの餌の開発、飼育方法の確立と2年くらい研究をして2014年1月に南三陸町で25頭の羊を飼い始めました。

 最初は、東京から通いながら、支援活動や羊の飼育を行っていましたが、やはり目の届かない為に、地元の方とのトラブルが起こったり、毎週末、車で片道700kmを通っていましたが、東京での仕事に影響が出始めました。このままではダメだという思いと、地元の方々に覚悟をみせる為に、2017年に東京の会社を清算して、単身南三陸町に移住を決心しました。

南三陸町で起業しようと思った理由は?

 南三陸の人に惚れたのが一番の理由です。震災後色々な地域の支援活動を行いました。その中でも一番しっくりきたのが、現在牧場のある南三陸町歌津の寄木という集落です。いろいろ活動をしていく中で、地域の方々とつながりこの地域の人たちと何かしたい!と強く思いました。自分と同世代の人が多かったというのもやりやすかったのかもしれません。あとは環境ですね。初めて南三陸に訪れた時はまだ震災直後で海には屋根が浮いている状態だったけどなんだかすごくホッとして、、愛着が湧きました。

起業する中で一番大変だったことは?

 今までやったことのなかったことをするというのがとても大変でした。私の場合起業の経験はありましたが、肝心な畜産の経験が全くありませんでした。震災後で復興のための助成金もあったので何とか続けられましたが、最初の1、2年は火の車でした。羊を飼うこと自体も苦労の連続でした。最初はとにかく本やネット、人のつてなどを使って勉強をしたり、都内の羊が食べられる飲食店をはしごして食べて回りました。後は、どこに牧場を開くかが一番の問題でした。土地問題です。

地方で起業する魅力は?

 これは私の見解ですが、地方で起業する方が注目される確率が高くなると思います。特に“普通と違うこと”をしたいなら地方がおすすめです。都市部で同じことをしても、様々な情報が密集しているからきっとそこまで注目されないと思うんです。でも、地方はスケールがちっちゃいからこそ地方特有のネットワークで人に見てもらいやすくて、注目が集まりやすい。また、ちょっとした地方紙に取り上げてもらっただけでも、情報社会の現代は全国規模に伝わることが多くあります。

 もう一つ地方での起業の良いところは町の人が味方になってくれるところです。地元の方が「頑張ってるね」などと声をかけてくださることが大きな励みになります。

 ただ、地方でよそ者が起業をするのは簡単なことではありません。実績や貢献がないので、地元の方との信頼関係をゼロから築く必要があります。きちっとコツコツ関係を紡ぐことを頑張れる人でないと少し難しいのかなと思います。

今後の展望は?

 来年度は羊業界を救おうと思っています!日本の羊業界って今はどこも赤字か、黒字でもギリギリっていう状態なんですよね。そこでどうにかしてこの状況を変えられないかと考えました。もし来年度この作戦が実現できれば、羊業界が大きく変わると期待しています。作戦の詳細は秘密です(笑)

最後に地方での移住を目指す方にメッセージ

 失敗を恐れず頑張ってください。特に若いうちは何度でもチャレンジできます。私の場合は50歳から羊飼いを始めて今に至るので、若い人は失敗を失敗と思わず挑戦することが大切です。「失敗したらどうしよう」ではなく、「失敗しても次がある!」本当にその通りです。失敗から学べばそれでいいんです。あと、少しくらい尖っていた方がいいと思います。周りの人から笑われても自分の意地は、ぜひ最後まで張り倒してください!

 もう一つ大切なことは、地元の人との関わり方です。よそ者が新しいことをするには、その地元の人の信頼が欠かせません。私自身、いざ起業するとなった時に土地の問題とぶつかりました。よそ者に土地を貸すのに加えて牧場をしたいというのですから、匂いの問題など反対意見が出ることを懸念していました。すると、地域の方がその集落の全住民46軒の方々を集めてくださったんです。そこで多少の反対意見もありましたが、無事に全員の賛成を得て、さとうみファームを始めることができました。

 その地域にガチッと入って信頼を得ることが、地方で起業する上では何よりも大切です。

INTERN’S SPEAK!

 今回のインタビューは【先輩起業家インタビュー】の中でも、特に起業がイメージしやすいものだったかなと思います。私は、金藤さんのお話を聞いて、たとえゼロベースでも、熱い思いと地元の方の信頼と協力があれば、起業はできる、という可能性が少し見えてきた気がしました。

 そして、今回インタビューさせて頂いた金藤さんはなんと出身が私と同じ広島県福山市だったんです!地元から遠く離れたこの南三陸でこんなにご活躍されている方と出会えるなんて思っていなくて、とても嬉しかったです。

 インタビュー後に、実際にわかめ羊を見せていただきました。初めて“わかめ羊”という言葉を聞いた時は、正直頭の上にはてなマークがたくさん浮かんでいました。わかめ羊が南三陸の高級わかめを食べている羊だと知り、今回初めてその羊と対面できました。金藤さんの「この南三陸だから羊を育てるんだ。」という熱い思いを聞かせて頂いた後だったこともあり、とてもワクワクしました。直接羊を見せて頂いた後で少し心苦しい気もしますが、次回はぜひ金藤さんのわかめ羊を食べてみたいと思います!

この記事のライター / ひまちゃん

広島県福山市出身。神奈川県の大学一年生。高校生の時に地元の商店街の人と空気の良さに気づき、まちづくりに興味を持つ。第二の故郷を探す旅の途中🐾現在は南三陸町の株式会社ESCCAでインターン中。
いつか自分の故郷でみんなのあったかい居場所をつくることが目標!でも、「地域のために自分には何ができるだろう」と悩み中。